造る人、emu。The Maker, emu.
Sep 26, 2026
emuの作品を見ていると、ときどき思う。
この人は、ただ絵を描く人というより、
「造る人」なんじゃないか。
絵を描く。
物語をつくる。
料理をする。
部屋をつくる。
手を動かして、何かをつくる。
ジャンルは違っていても、emuの中ではきっと、それほど離れたことではないのかもしれない。

emuの部屋
赤い壁に、ソファ。
この部屋は、実際にemuが暮らしている部屋をもとにした、emuのプロフィール画像だ。
あるとき、emuが部屋をDIYしていると聞いて、
写真を見せてもらった。
壁は、思いっきり鮮やかな赤だった。
そして部屋が出来上がっていくにつれて、
そこに飾るものまで作り始め、
それが少しずつ増えていった。
花や鳥、立体の作品。
できあがるたびに見せてもらうのが、いつも面白い。
送られてくる画像をもとに、
emuとまだ会ったことのない私は、
emuのいる世界について想像を広げてみる。
花があって、鳥がいて、ティーポットがあって。
黒いうさぎの時計が、こちらを見ている。
emuの描くImaginary Portraitsとは、
また少し違う世界。
不思議なのは、そうやって少しずつ別の断片を目にしたとしても、
「なんだか、emuっぽい」
と思えてしまうことだった。

絵の中から、外へ
emuは絵を描く。
でも、絵の中にいるはずのものが、
ときどき外へ出てくる。
花は立体になり、
鳥も、ティーポットも、手で触れられるものになる。
黒いうさぎは、時計になって壁にいる。
絵の中にあった世界が、そこで終わらない。
紙の外へ出て、部屋の中に置かれ、
いつの間にか暮らしの一部になっている。
そして、面白いことに、その逆もある。

現実から、また別のものへ
部屋に置かれた赤い筒。
これは、もともと花器として作られたものではない。
emuが台湾を旅したときに買った、茶葉が入っていた紙筒だ。
お茶を飲んで終わりではなく、
その紙筒は、今度は花を飾るものになった。
そこに、emuがつくった花や鳥が挿されている。
何かを見つけて、
面白がって、
手を加えたり、使い方を変えたりしながら、
自分の世界の一部にしてしまう。
現実にあったものがemuの手に渡って、
少しだけ違う世界のものになる。
現実が作品になって、
作品がまた現実の中へ戻ってくる。
その行き来が、emuのまわりでは、ごく普通に起きているように見える。
絵も。
物語も。
料理も。
部屋も。
立体も。
なんだか全部、楽しそうにつくってしまう。
だから私は、emuのことを「絵を描く人」とだけ呼ぶと、何かが足りない気がする。
造る人。
そのほうが、しっくりくる。
絵から現実へ。
現実から絵へ。
もしかすると、emuにとっては最初から、
そこに境目なんてないのかもしれない。
絵の中だけに世界があるのではなく、
部屋にも、つくったものにも、日々の暮らしにも、
emuの世界が続いている。

emuの正体
本当を言えば、
emuの居る世界について想像を広げながら、
私が見てみたかったのは、
「emuが作った部屋」ではなく、
「emuの正体」だった。
けれど、
絵の中から現実へ。
現実から、また絵の中へ。
そのあとを追いかけているうちに、
少しずつ広がっていくemuの世界に、
私のほうが迷い込んでしまった。
だから、いまだに
その正体を見破れないでいる。
Written by munira