画面の光、紙の光。emu『美味しい月』をプリントして
Sep 24, 2026
emuの作品『美味しい月』をジークレーでプリントすると決めたとき、ひとつ気になっていたことがありました。
デジタルで描かれた、この「光」は紙の上でどうなるんだろう。
『美味しい月』には、たくさんの光があります。
夜空に散らばる星。
青や緑に輝く装飾。
白い服を包む淡い光。
そして、静かに浮かぶ月。
画面で見るデジタル作品は、ディスプレイそのものが光を放っています。
でも、紙は光りません。
この作品を紙にしたとき、画面の中で感じていた光まで失われてしまわないだろうか。
プリントする前は、そこが少し心配でした。
「わあー、光ってる」
届いたジークレープリントを初めて見たとき、
「わあー、光ってる」
思わず声が出ました。
もちろん、紙そのものが発光しているわけではありません。
それなのに、星はちゃんと瞬いて見える。
白い服のまわりには淡い光を感じる。
暗い背景の中から、青や緑、オレンジが浮かび上がってくる。
画面と同じ光ではない。
でも、紙の上にも確かに『美味しい月』の光がありました。
紙って、本当にやっかいです。
実際に作品をプリントするようになって、感じることがあります。
紙って、本当にやっかいです。
部屋の明るさ。
窓から入る光。
その日のお天気。
作品を置く場所。
そして額装。
その全部に影響されます。
明るい自然光の中で見た色と、少し暗くなった部屋で見た色は違います。
見る時間が変われば、目に入ってくる色まで変わります。
同じ一枚なのに、そのたびに違って見える。
画面のように、自分から一定の光を出してはくれない。
周りにある光を受けて、そのとき、その場所で作品を見せてくれる。
それが紙なんだと、少しずつ分かってきました。
光っていないのに、光が見える
近くで見ると、『美味しい月』を印刷しているアルシュ水彩紙には、細かな凹凸があります。
白い服の部分を見ると、その質感がよく分かります。
表面がつるつると反射して、光って見えているわけではありません。
むしろマットな紙です。
それなのに、少し離れて作品全体を見ると、ちゃんと光を感じる。
紙そのものの反射ではなく、色と色、明るさと暗さ、その組み合わせの中から光が現れてくる。
そして近づけば、今度は画面では意識しなかった紙の凹凸や、色の細かな表情が見えてきます。
デジタルだった作品が、手で触れられる「もの」になったことを感じる瞬間です。
画面の光から、紙の光へ
こちらが、emuが描いたデジタル原画です。
画面の中では、ディスプレイの光を通して『美味しい月』を見ることができます。
そして紙になった『美味しい月』は、部屋にある光を受けながら、また違った姿を見せてくれます。
どちらかが本物で、どちらかがその代用品、ということではないのだと思います。
画面には、画面の光がある。
紙には、紙の光がある。
今回『美味しい月』をプリントしてみて、改めてアルシュを選んでよかったと思いました。
MUNI ART GALLERYで届けたいのは、作品の画像を大きく印刷しただけのポスターではありません。
紙を選び、作品に合った形でプリントし、手に取って、飾って、日々の光の中で眺めることのできるもの。
ひとつの作品として手元に置ける、複製画です。
今日と明日でも、きっと少し違って見える。
そんなところまで含めて、紙の作品を楽しんでもらえたらと思っています。
Written by munira